マセラティグラントゥーリズモS MC-Shitクラッチ交換作業
2026年06月15日
マセラティ グラントゥーリズモS MC-Shift 車検整備
群馬県からお越しいただきましたJ様、この度は入庫頂きありがとうございました。
お車をご購入された直後から「長く乗りたい」とご相談をいただいており、今回は車検のタイミングで徹底的にメンテナンスしてほしいとのご要望をいただきました。お車を完調な状態に仕上げる作業=リセットを行いましたのでご紹介いたします。
車両明細
2009年式 マセラティ グラントゥーリズモS MC-Shift 走行距離96,131km
新車から17年が経過し、走行距離が約10万kmとなると、細かい部分を含めてさまざまな箇所に劣化が出てくるタイミングです。実際この車両も走行中にギア抜けが多発し怖くて乗れない状態になっておりました。しかし今回の作業でキッチリ仕上げることができれば、しばらくは安心してお乗りいただける状態になります。
壊れてから直せばよいという考え方もありますが、モグラ叩きのようになるだけでなく、最悪周辺パーツに影響を与えてしまい、2次災害につながり結果的に余計なコストが掛かることもあります。また、メンテナンスの工程の中で、同時に作業を行うことで工賃を抑えられる箇所については、最終的なコスト削減にもつながるため、予防整備として同時交換をお勧めしております。
今回の作業内容は以下の通りです。
1.車検整備一式
2.クラッチ交換
3.F1ポンプホース交換(ミラコラーレオリジナル BERTOCCHI)
4.RPMセンサー交換
5.油脂類交換
エンジンオイル、トランスミッションオイル、ブレーキフルード、冷却水
6.消耗品交換
・ラジエーターサブタンク
・ポーレンフィルター
・リアタイヤ
・ドライブベルト(テンショナー、アイドラー、ウォーターポンプベルト)
7.エンジンオイル漏れ修理(タペットカバーから)
8.サイドブレーキシュー交換
9.エンジンマウント交換
10.フロントサスペンションブッシュ交換
11.4輪アライメント調整
12.シリンダーブロックデリバリーホース交換
13.リアブレーキローター、パッド交換
では、写真でメンテナンス内容をご紹介していきます。
クラッチ交換作業
グラントゥーリズモのクラッチは乗り方にもよりますが、3万kmから5万kmが交換の目安となります。
交換したパーツ一式
左上段から、主な部品をご説明します。
クラッチコンプリート、フライホイール、クラッチセンサー
エンジンマウント、パイロットベアリング、スラストベアリング
F1ポンプヒューズ、F1ユニット油圧ラインホース
クラッチ交換を行うため、ミッションを降ろしていきます。
下の写真をご覧いただくと、漏れたオイルに金属粉や埃が付着し、花が咲いたような状態になっていることが分かります。
ホースのアップです。
通常であれば漏れたオイルが確認できますが、長い年月の中で漏れたオイルが汚れに覆われ、見えにくい状態になっていました。まるでカビが生えているようにも見えます。
ホースにはひび割れも発生しておりました。
劣化しているホースを交換します。
クリーニングを行い、ホースを交換して完了です。
続いてクラッチ周辺をご覧ください。
センター部分に錆びが出ている箇所が少し削れているのが分かるかと思いますが、ここはスラストベアリングが当たる箇所です。カンビオポンプから圧送されたオイルがこのスプリングを押すことで、クラッチが切れる仕組みになっています。
スプリングの根元が凹んでおりますが、この凹みがあるのが後期型のクラッチです。
クアトロポルテ4.2 スポーツGT以降に採用された対策品です。
この凹みがスプリングの強度を上げていますが、対策前は真っ直ぐなバネだったため、劣化により根元から折れてしまい、クラッチが切れなくなるトラブルがありました。
ここが折れるとクラッチが滑っているのと同じ症状になり、不動になってしまいます。
改良版になってからは、スプリング折れのトラブルはなくなりました。
交換後
フライホイール
交換後
交換したベアリング廻り
ベアリングも、ゴムの劣化が目視で分かるほどでした。
続きまして、エンジンマウントです。
ここが劣化すると、アイドリング中に振動が手に伝わってきたり、異音が発生したりします。
それ以上に、エンジンを高回転まで回していくと、エンジンの動きを抑えることができず、ハーネスなどにテンションが掛かり、二次的なトラブルが発生する場合があります。
交換前はゴムが劣化して潰れてしまい、エンジンの振動を吸収できない状態でした。
下の写真が新品のエンジンマウントです。
交換前のエンジンマウントです。
負荷が掛かっていない状態でのクリアランスですので、実装してエンジンの重量が掛かった場合にどうなるか、想像がつくと思います。
サイドブレーキシュー
こちらは頻繁に交換する部品ではありませんが、サイドブレーキを引きずっていたようで、摩耗がかなり進んでおりました。
サイドブレーキシューは普段目にする機会が少ないため、初めてご覧になる方も多いかと思います。現在はディスクブレーキが主流ですが、それ以前の車両ではドラムブレーキが採用されており、同じようにシュー(ブレーキライニング)を使って制動していました。
実際、私たちも交換した台数は20年で20台に満たないと思います。
リアブレーキローター&パッド交換
欧州車に初めてお乗りになるオーナー様が驚かれるポイントのひとつが、ブレーキローターの交換頻度です。国産車の場合、ローターを交換する機会は非常に少ないのに対し、マセラティを含む欧州車では、ブレーキパッド2回交換につき、ローターも1回交換するのが一般的です。
これは、欧州車のブレーキシステムが「パッドだけでなくローター側も適度に削って制動力を確保する」設計になっているためで、ローターの素材も国産車と比べるとややソフトな傾向があります。
タペットカバーからオイル漏れ
こちらはV8エンジンの持病とも言われる箇所で、おおよそ3年周期での交換が目安となります。ここから滲み出たエンジンオイルがマフラーなどに垂れると、最悪の場合、火災の原因にもなりますので注意が必要です。エンジンを高回転まで回すと焦げ臭いにおいがしてきますので、何か臭いと感じた際は点検をお勧めいたします。
(弊社でオイル交換をする際は、簡易点検も同時に行っております)
ヘッドカバーを外して、パッキンを交換していきます。
ヘッドカバーを取り外した際にきれいに洗浄しますので、新品のような輝きを取り戻します。
以上で作業は完了です。
入庫前はギア抜けなど複数のトラブルを抱えておりましたが、すべてクリアな状態になりました。
これからも距離を積み重ね、次の節目である15万kmまで楽しんで走ってください!
この度は遠方からのご入庫、誠にありがとうございました。
これからも楽しいマセラティライフを送っていただけるようサポートいたしますので、よろしくお願いいたします。




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