クアトロポルテ(ガンディーニQP) エンジンオーバーホールメンテナンスレポート!
2023年06月25日
クアトロポルテV6 EVO(ガンディーニQP) エンジンオーバーホールメンテナンスレポート!
4代目クアトロポルテ V6 EVO(通称:ガンディーニQP)にお乗りのお客様より「高速道路走行中に突然エンジンがストールしそのまま不動となってしまった」と緊急連絡が入りました。
クランキングはするがエンジンに火が入らないとの事で最初は燃料系のトラブルでは?と思っておりました。
お車をお預かりし点検を進めると、なんとエンジンの圧縮がかかっていないことが判明…
バルブタイミングも大きくずれていることも分かり、まさかのエンジンブローが判明しました。。。
状況のご説明と今後のメンテナンス方法に関してオーナー様とお打ち合わせした結果、「なんとか愛車に乗り続けたい。」とオーナー様の熱意から、今回はエンジンをオーバーホールし、復活させることとなりましたので、作業の様子と共にエンジンオーバーホールのメンテナンスレポートをお届けいたします。
突然のエンジンブロー。。。
「走行中、突然エンジンがストールしてしまったので路肩にすぐに停車させた。再スタートしようとしてもエンジンが掛らない」とオーナー様から連絡が入りました。
エンジンからの異音や発煙などなく、自然にエンジンが止まったとの症状から燃料系などのトラブルを疑い故障探求を行いました。故障探求を進めていきますが、どうしてもエンジンがかかりません…
まさかとは思いつつもエンジンをチェックすると、、、圧縮が全くかかっておらず、バルブタイミングもズレている状態でした。
タイミングベルトを確認すると、バルブタイミングが大きくズレていることが確認出来ました。
本来はエンジンの黄色い丸印の基準点とベルトの黄色いマークが同じ位置でなければなりませんが、基準点から大きくズレていることが写真からもお分かり頂けると思います。
大きくタイミングがズレてしまったため、バルブとピストンがついてしまいバルブクラッシュしエンジンブローがブローしてしまっていました。
その後の点検でタイミングベルトカバーがベルトに巻き込まれ、タイミングベルトに負荷がかかり正常に回転できなかったことが原因でバルブタイミングがズレてしまった事が分かりました。
今回はバルブが収まるエンジンヘッドに集中してダメージが入り、奇跡的にエンジン腰下(ピストンやコンロッドなど)にダメージはなく、不幸中の幸いとしてエンジンのヘッド周りのみにダメージが入っている状態でした。
そこで今回はエンジン腰下部分はそのまま残し、エンジンヘッドを中心に組み直しオーバーホール作業を行っております。
しかし「エンジンをオーバーホールする」と一言で書きましたが、現実は簡単ではありません。
エンジンを分解し組み立てる技術は何とかなりますが、生産から20年以上が経過しているガンディーニQP。オーバーホールに必要なパーツが入手できるかが一番の問題です。
タイミングベルトやウオーターポンプなどエンジンを動かす上で重要な部品はもちろんの事、エンジンを分解して作業を行う為のガスケット類なども全て新品パーツが揃わなければ作業を開始することができません。
まずは国内でパーツの調達を試みますがほとんどが生産終了、、、
本国イタリアにも確認しても、やはり生産終了でパーツはありません、、、
世界各国に範囲を知り得る限りでパーツの在庫を当たりますが、これもまたかなり難航しました。メールでの問い合わせで在庫ありと回答が来ても、いざオーダーを掛けると在庫無しの回答が来ることもありました、、、
本当に世界中から少しずつ在庫パーツをかき集め、何とか作業ができる状態に持っていくことが出来ました。(このパーツ調達が一番時間がかかりました)
肝心のエンジンヘッドはバルブからヘッドまで、何とかにパーツが入手できそう。との事でしたが、この時代のパーツは個体差が大きく、パーツとパーツの相性の問題もあります。新品パーツを各パーツを正しく組み上げても正常に動くかどうか、、、
またイタリアで見つかったヘッドは片バンクのみでとんでもない価格を提示されました、、、
そこで今回は実働していた全く同じエンジンを入手し、エンジンヘッドをオーバーホールしてからお車のエンジンとドッキングする方法で施工しております。
写真は入手したエンジンヘッドです。これから各部のメンテナンスを行います。
綺麗に動いているエンジンでしたが開けて見ると手を加えなくてはいけない箇所があります。
まずは新しいエンジンヘッドの各部をメンテナンスしていきます。
バルブの動作確認やバルブタイミングなどを確認し、必要であれば調整を行います。
その他各部のクリーニングや面研を行い、エンジンに組み付ける準備をしていきます。
なかなか見ることのできないエンジン内部もこの機会にきれいにしておきます。
エンジンヘッドをはじめとする各パーツの準備が整ったところで、お車のエンジンに手を入れていきます。
まずは補器類などを取り外し、ブローしてしまったヘッド部分を取り外します。
エンジンヘッドが無事に取り外され、ピストンが姿を現します。
再度入念にチェックを行い、ピストンやコンロッドにダメージが無いことを確認し作業を進めます。
長年蓄積されたカーボン汚れなどをクリーニングし、いよいよ組み立てに入ります!
エンジンヘッドがドッキングしました!
通常はサージタンクやタペットカバーなどが装着されている為、普段なかなかメンテナンスすることが難しい箇所も今回一緒に手を加えております。
経年劣化によりひび割れや膨張が起きていたホース類は耐久性の高いシリコンホースに交換しております。その他ハーネス類もメンテナンスを行っております。
これらの作業を丁寧に行う事で、これから先の電気系のトラブルなどを未然に防ぐことが出来ます。
続いてタイミングベルト周りを組み付けていきます。
ウォーターポンプ、ベルトテンショナー、ベアリングなども交換します。
ベアリング類もパーツが生産終了となっており、入手するまで最後の最後まで苦労しましたが無事新品に交換する事が出来ました。
タイミングベルトを取り付けていきます。
エンジンの動作や吹け上りに大きく左右する部分ですので慎重にタイミングの調整を行います。
無事にタイミングベルトが組み上がりました!
タペットカバーやサージタンクもクリーニングしてからエンジンに取り付けていきます。
タペットカバー、サージタンクが装着されました。
丁寧にクリーニングしたことで本来のレッドが非常に映えます!
エンジンも見慣れた姿になってきました!
取り外した補器類を丁寧に組み付けていきます。
インテーク関係などを組み付けてエンジンの組み立ては完了です!
最後にエンジンオイルや冷却水などを入れ、いよいよテストを行います。
写真だと一瞬ですがここまで長い道のりでした。
果たしてエンジンは無事にかかるのか、、、
いよいよエンジンに火を入れます。
野田も少々心配そうに見守ります…
キーを回し、「キュッ キュッ キュッ… ブォーン!!!!!!」
無事にエンジンがかかりました!!
ガンディーニQPが息を吹き返した瞬間です!!!
自然と拍手が出てしまいます^^
エンジンのかかりの良さとアイドリングがピタッ!と安定している事に感動します。
普段ガンディーニQPではクランキングは良くて5回〜6回、なかなか火が入らないお車だと10回近くクランキングしてやっとエンジンがかかるクルマが多いです。正直キーを回しながら「エンジンかかるかな?」と不安になってしまう程ですが、こちらのガンディーニQPはクランキングは「キュ キュ キュ …ブォーン!」と僅か3回ほど!クーペやグランスポルトと遜色ない程しっかりエンジンがかかる様になりました!!
またアイドリング状態では全くと言っていいほどハウンチングや息継ぎをせず、タコメーターの針も「ピタッ!」と一定の数値を指しています!エンジンの振動も少なくエンジンの好調さが伺えます!新車の時のエンジンより間違い無く良い状態です!
エンジンの分解、各部のクリーニング&研磨作業、そしてタイミングの取り直し作業と、作業中はずーっとエンジンとにらめっこをしていた工場長 堀口にも笑みがこぼれます(^^)
その後はオイル漏れや冷却水漏れなどが無いか確認し、テスト走行を行います。
最初は短い距離から走行し、徐々に走行距離を伸ばしていきます。
チェックシートに従い、問題が無ければ次のステップに移行するを繰り返し行い、にエンジンの回転数も徐々に上げながら負荷を掛け入念にテストを行っていきます。
テスト結果は「良好!!」。「絶好調!!!」です!
エンジンブローからの完全復活を遂げることができました!
S様、この度は大変お待たせ致しました。
無事におクルマが蘇り、スタッフ一同大変嬉しく思います。
元気を取り戻したガンディーニQPで存分にドライブをお楽しみください!
これからも愛車の主治医としてしっかりサポートさせて頂きますので、今後ともよろしくお願いいたします。
☆マセラティのメンテナンス、カスタマイズは専門店のミラコラーレにお任せ下さい。
株式会社 ミラコラーレ
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